『抱擁、あるいはライスに塩を』を読んだ感想




あれだけ苦手だった江國香織作品を読み終えるなんて…

「抱擁塩」を読み終えたとき

 

「どこかしら感慨深いものがある。」

 

というのが読後の率直な印象。

 

僕の中でどこかしら江國香織アレルギー的なものがあったから。

 

遡ること数十年。読書好きを見つけては「好きな作家は?」と聞く習慣があった上岡青年。

 

で、その答えのなかに江國香織の名前が挙がることが少なくなかった。

 

気になった上岡青年は、意を決して江國香織作品に手を伸ばしてみる。(残念ながらタイトルを思い出せない)でも、途中で読むのをやめてしまった。

 

忙しかったからとか理由があった訳ではない。明確に自分の意志で読むのを辞めた記憶がある。

 

江國さんの描く世界は割り切れないものばかりで、曖昧模糊と混沌のサラダボウルみたいだったから。

 

今思うと当時の自分は、「世界はこうあるべき、人間はこう生きるべき」みたいな狭量な世界観の中で息をしていたんだと思う。青年の名に恥じない青さだった。

 

そんな経緯があるからこそ、ナチュラルに(しかも楽しみながら)江國本を読み終えた自分に少し驚いていたりもする。

 

これを人間の器が大きくなった、円熟味が増した、と捉えるか、
感性が鈍くなって許容量が大きくなった、単なる老いと捉えるかは
判断に迷う所ではあるけどね(笑)

 

 

 

ロクでもない愛すべき人々

物語の中心となる屋敷の存在や懐かしさを纏った空気感なんかが「ニーナの行進」に近い所があった。ただ「抱擁塩」の方は大人の視点から描かれる部分も多かったので、物語の深みが一段濃い気がした。

 

物語全体から感じたザックリ感想は、価値観のギャップや一筋縄ではいかない感情と、どう折り合いをつけて生きていこうか?ともがき続ける人たちの物語。

 

そして「抱擁塩」の中で起きていることは、絵空事というよりも僕らの生活でフツーに起こっていることなんだという実感もあった。

 

建前と本音、理性と欲望、清廉と猥雑…。矛盾した両者の間をフラフラと千鳥足で歩いていくのが人生の王道のような気がする。

 

柳島家の人々は漏れなく全員が人生の王道を歩いていたので、僕の目に魅力的に映ったのかも。

 

登場人物で一番のお気に入りは桐ちゃん。表現として一番好きなのは、締めの2文。

 

「二人の年金生活者と、いつまでも子供みたいな独身女。いまや住人が三人だけになったこの古い家は、ときどきそうやって身をふるわせ、甘いためいきをつくのだ。」

 

時間を空けてまた読み返したいと思える一冊でした。

 

 

 

抱擁、あるいはライスに塩を

抱擁、あるいはライスに塩を

 

ハードカバー: 600ページ
出版社: 集英社 (2010/11/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4087713660
ISBN-13: 978-4087713664
発売日: 2010/11/5

 

 

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